
近年、激変する国際情勢の中で頻繁に取り沙汰される国がある。パキスタンだ。米国とイランの対立で仲介役を買って出たこともある国だ。旅行好きならフンザ村の名を思い浮かべ、登山好きならK2の峰を挙げるだろう。
ヒマラヤの登頂と言えばネパールがまず頭に浮かぶが、パキスタンもまた登山者にとって外せない聖地だ。最近ではeスポーツを嗜む若い世代の間で、新興のゲーム強国として認識されているほどだ。こうした多様な顔を持つのがパキスタンである。
パキスタンの近代史は第二次世界大戦直後に始まる。もともと英領インドとともに独立したが、宗教的対立の末にインドから分離して成立した国だ。このため現在でもインドと国境を巡る対立が絶えない。インドにとってパキスタンは中国と同様に警戒が必要な相手であり、クリケットやホッケーの代表戦が行われる日には両国の間が騒然とすることがある。
筆者が初めてインドを訪れた際、入国カードに「最近パキスタンを訪れたことがありますか」との問いが目に入った。当然「はい」「いいえ」で答える形式だが、好奇心や冗談で「はい」にチェックを入れれば入国審査で長時間足止めされる恐れがある。パキスタン訪問歴を理由に入国ビザが拒否されたという話は聞かないが、数年前にラジオ局に勤めていた知人が取材で訪れた際、インドの入国審査で苦労したと聞いた。パキスタン側の入国カードでも最近インドを訪れたかを問うらしいが、筆者がフンザやK2をまだ訪れていないのは、インドを頻繁に行き来してきた経歴があるために事前に警戒されるのではないかという不安があるからでもある。
一方でパキスタンはワールドミュージック愛好家にとって、神秘的で奥深い宗教音楽や伝統音楽の宝庫として知られている。特に英国やフランスを中心とする欧州ではこの音楽様式を「カワーリ(Qawwali)」と呼び、現地では「クワーリ」と称することが多い。呪術的に聞こえる旋律と重厚なリズムが強い刺激を与え、1980年代中頃に西欧でワールドミュージックとして紹介された際には大きな衝撃を与えた。英国の音楽ファンはこのクワーリを、1960年代後半に人気を博したサイケデリックやアシッドロックの21世紀的な再来として受け止めたという。だがクワーリという伝統的な歌唱様式の歌詞は、イスラムの神アッラーを讃える内容である。
2000年代後半、当時のトップ・クワーリ歌手ファイズ・アリ・ファイズが我が国の処容文化祭(처용문화제)に招かれてクワーリを披露した際、全国から集まった音楽ファンに強烈な印象を残した光景は今も鮮烈に記憶に残っている。強烈なタブラのリズムとハルモニウムの旋律、華やかな装飾音を伴って熱唱するクワーリ歌手の異国的な声を体験したければ、ファイズ・アリ・ファイズと並んで歴代最高とされるヌスラット・ファテ・アリ・カーンを聴くといい。













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