

4月の忠南・アサン市。サプギョチョン(삽교천)とアサン湾防潮堤(아산만방조제)付近を走っていると、突然車を止めたくなるような景色が現れる。若草色の丘の上に、ピンク、黄色、紫、赤、白といった原色の波が果てしなく広がる。「あれが全部花なのか?」と足を止め、目を見開いても視界は鮮やかな花で埋め尽くされる。ここは忠南アサン市・英仁面(영인면)にあるピナクルランドだ。
一輪二輪の話ではない。100万本のチューリップだ。円形庭園から芝生広場に至る一帯に植えられた球根が、この春いっせいに最も華やかに咲き誇っている。この花畑を実際に歩けば断言できる。今春、最も眩しいスポットはピナクルランドに他ならない。
ターバンからチューリップへ――花一輪の長い旅
ピナクルランドへ向かう車内やバスの待ち時間に覚えておくといい話がある。それはチューリップの起源だ。多くの人がチューリップをオランダの花だと思っているが、実際の原産地は中央アジアであり、オスマン帝国の宮廷で愛された花だった。ヨーロッパには16世紀中ごろ、アラブを経て伝わり、オランダには1593年に植物学者シャルル・ド・レクルーズがトルコから持ち帰った。彼はライデン大学で栽培と研究を行い、多くの新品種を生み出した。
もともと「lale(ラレ)」と呼ばれていたチューリップは、ターバンのような形から「Tülbend(チュルベンド)」という別名を得た。これがラテン語の tulipa、フランス語の tulipan を経て英語の “tulip” になった。つまり、名前自体がトルコのターバンに由来している。

その後、オランダでチューリップは爆発的な人気を得て、17世紀には「チューリップ・マニア(Tulipomania)」と呼ばれる前代未聞の投機ブームが起きた。新種に「総督(Viceroy)」や「永遠の皇帝(Semper Augustus)」といった名が付けられ、ある希少種は家一軒分の値段を超えたという記録が残るほどだ。
今日、チューリップは世界で最も愛される春の花の一つになっている。ユリ科の多年草で、南東ヨーロッパから中央アジアが原産。秋に植えられ、翌年の4〜5月に鐘形の花を咲かせる。温度変化に敏感で、日差しのある日中は開き、夜は花弁を閉じる――まるで呼吸するかのように表情を変える繊細さがチューリップの魅力だ。同じ花畑でも朝と午後で印象がまったく違うのはそのためである。
色ごとに花言葉も異なるが、チューリップ全体の花言葉は「あなたの笑顔は輝いている」。春の一季、ピナクルランドを訪れた人々にこの花畑が伝える言葉はまさにそれだ。

韓国では園芸種のチューリップは暑く湿った夏に耐えられないため、一般に一球根で一度だけ花を楽しんだら廃棄するのが普通だ。だからピナクルランドが毎年数十万個の球根を新たに植える必要がある。100万本がただ咲いたわけではない。秋から丹念に植え育ててきた努力の成果である。
採石場が樹木園に変わった――ピナクルランドという場所の力
チューリップの話の前に、まずピナクルランド自体について触れておくべきだ。この土地が元々何だったかを知れば、花が放つ感動はさらに深まるからだ。
ピナクルランド樹木園は、樹木園や植物園、展望台、動物体験、農村体験、花祭り、星空祭、ベーカリーカフェ、滝や噴水、屋外庭園、テーマ庭園、芝生広場などを備えた複合的な自然文化空間だ。これらの施設が全て、かつて石を採っていた採石場の跡地に作られたことを知れば驚くに違いない。急峻な崖やでこぼこの地形をそのまま生かして、そこに花や木、滝を配置しているのがピナクルランドである。

岩壁的間から流れ落ちる「月明かりの滝」、高台からアサン湾を見下ろす展望台、そして樹木園の中心を埋め尽くす花庭。この劇的な地形の起伏が、ピナクルランドを単なる花畑ではなく一つの「体験」へと変えている。上り坂、下り坂、トンネルのように続く散策路があり、ある区間には「苦あれば楽ありの道」と名付けられた場所まである。苦労して登った先に広がる景色が、まるで月明かりのように降り注ぐ設計だ。
100万本の実物――今のピナクルランド
今年のピナクルランドのチューリップ祭は4日から来月10日まで開催される。24日現在、祭りはちょうど盛りの時期にあり、チューリップは最も華やかに咲きそろっている。遅すぎたのではと心配する必要はない。まだ十分に時間がある。
円形庭園と芝生広場一帯は、品種ごとに区画され、色や背丈を競うように並んでいる。単に赤や黄色だけではない。淡いピンク、サーモン、コーラル、ワインレッド、濃紫、クリーム色、二色混合の複色種まで揃う。どの方向にカメラを向けても補正不要の写真が撮れる。SNSで話題になるのも当然だ。

多彩な春の花やチューリップに加え、週末にはバブルショー、サムルノリ、音楽会など多様なイベントが行われる。カフェ・ド・ピナクルでは春の花エードや春花の双和茶といった特別メニューが用意され、フードマーケットでは各種の料理も楽しめる。花を見るだけでなく、食べて飲んで一日中楽しめるコンテンツが整っている。
とくに注目すべきは、チューリップ散策路近くにある動物体験場だ。アルパカや花鹿、ユサン羊への餌やり体験、球根の植え付け体験も行われる。花を見て、食事をして、動物と遊んでいるうちに、気づけば日が傾いている――そんな場所だ。2時間のつもりがいつの間にか5時間過ぎていることも珍しくない。
夜も終わらない――土曜夜の花火
ピナクルランドの春祭で、チューリップと同じくらい多くの人が楽しみにしているのが花火だ。4日から6月21日までの毎週土曜午後8時30分、ピナクルランドの夜空が花火で彩られる。全12回にわたるこの花火ショーは、壮麗な音楽とともにアサンの夜を飾る。家族の月に当たる来月24日の日曜には特別追加公演も予定されている。

花火がある土曜は営業時間が延長され、午後9時まで観覧可能だ。平日は午前9時から午後6時30分まで。昼間にチューリップをたっぷり見て、夕方は芝生広場に場所を確保して空を見上げる――それが土曜のピナクルランドの定番コースだ。
毎週末、花火以外にもマジックショーやバブルショー、アカペラなど文化公演が行われる。家族連れなら、子どもは動物体験場でアルパカに餌をやり、大人はカフェで春の花エードを一杯。日が沈んだらみんなで花火を見るという一日が理想的だ。

入場料は繁忙期と準繁忙期で大人料金が1万3000ウォンから1万5000ウォンに設定されている(約1,300円〜1,500円)。ネイバーなどのオンライン予約を利用すれば割引を受けられることが多いので、訪問前に事前予約をしておくことを勧める。現地で並ぶより賢明な選択だ。
チューリップの前で「靴一足」が重要だ
ピナクルランドを楽しむために必要なのは快適な靴だけだ。ここは四方が傾斜している。採石場の地形を生かしているということは、景観が美しい反面、上り下りが続くということでもある。特に「苦あれば楽ありの道」を含む園内の一部区間はかなりの勾配だ。
ヒールで来ると、その日は写真を撮る側ではなく、撮られる側のサポート役になってしまう可能性が高い。必ずスニーカーで来ること。服装はできるだけ軽くし、チューリップの色に合うコーディネートにすれば写真映えは確実だ。4月末のアサンは昼は暖かいが日陰は肌寒いので薄手の上着を一枚持って行くといい。

園内にはカフェ・ド・ピナクルがあり、軽食や飲み物が楽しめるほか、フードマーケットも運営されている。ただし、花庭の中を歩きながら飲食するより、花に集中して鑑賞することを勧める。百万本の前でトッポッキの汁をこぼすのは、自分にもチューリップにも申し訳ない行為だ。
自家用車がなくても心配無用――公共交通の完全案内
ピナクルランドの唯一の弱点を挙げるとすれば、アクセスがやや手間だという点だ。しかし方法はいくつかあるので心配は不要だ。
自家用車なら目的地住所を入力すればよい。電車・地下鉄利用なら選択肢は三つ。まず首都圏電鉄1号線の終点近く、温陽温泉駅で下車しタクシーで約20分。次にKTXで天安アサン駅下車、タクシー約30分。天安駅からはタクシーで約40分。いずれの駅も首都圏から1〜2時間以内なので、ソウル、京畿、仁川からの日帰りが十分可能だ。

バスを利用する場合、温陽温泉駅前のバス停から600・601・610・614番に乗れば約40分。運行間隔は30〜40分で、降車は「モウォンリ停留所」。降りたらバス進行方向に少し戻ると左手にトンネルが見える。このトンネルの正式名称は「月線地下通路2」。トンネルを抜けて歩いて約10分でピナクルランド入口に到着する。二つの小さなトンネルを抜ければ、ピナクルランドを示す横断幕が見えるので迷うことはない。

温陽温泉駅では市内バスのほかタクシー利用も可能だ。複数人で行くならタクシーを割り勘にして乗る方がバスより早く、結果的に経済的な場合もある。週末の来訪は付近の駐車場が混雑しやすいので、公共交通の利用が便利な場合もある。
春は短い。チューリップはさらに短い。今この瞬間、ピナクルランドのチューリップは最も華やかな盛りを迎えている。













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