野球で最もスリリングな瞬間はいつだろうか。多くの人は、9回裏2死満塁、窮地で打席に立った代打がフェンスを越えるホームランを放つ瞬間を思い浮かべるだろう。
こうした劇的な逆転は球場のダイヤモンドだけで起きるわけではない。クラシック音楽界にも、予期せぬ事故や病気で空いた穴を埋め、一躍スターになったいわゆる「代打神話」が存在する。
最も象徴的なのはレナード・バーンスタインだ。1943年、当時25歳の無名の副指揮者だった彼は、巨匠ブルーノ・ワルターが公演当日の朝に突然インフルエンザで倒れたと知らされる。リハーサルの時間もないままバーンスタインは礼服を借り、ニューヨーク・フィルの指揮台に立った。この公演はCBSラジオで全米に生中継され、複雑な楽譜を完璧に読み解いた彼は一夜にしてスターになった。こうして彼の時代は「代打」の瞬間から始まった。
韓国が生んだ世界的ピアニスト、チョ・ソンジンの例も見過ごせない。2017年、世界最高峰とされるベルリン・フィルのアジアツアー直前に、当時絶頂期のランランが左腕の負傷で降板する事態が起きた。救援投手として抜擢されたのがチョ・ソンジンだった。ショパンコンクール優勝で既に名は知られていたものの、ベルリン・フィルとの共演は別次元の舞台だった。短期間でラヴェルのピアノ協奏曲を仕上げ、ツアーで圧倒的な演奏を披露して世界的巨匠への足がかりを築いた。
最近の例としては2023年、ピアニスト藤田真央がある。カーネギーホール公演を前に巨匠内田光子が突然病で欠席し、藤田はわずか24時間で代役として舞台に立った。彼の独創的なモーツァルト解釈はスタンディングオベーションを呼び、準備された者に機会がどう訪れるかを改めて示した。
先週、ソウル市立交響楽団の公演でも同様の出来事が起きた。本来共演する予定だったピアニスト、アリス・サラ・オットが手の不調で急遽手術を受け、舞台に立てなくなったため、指揮を務めていたキム・ソヌクがピアノの前に座った。
彼はピアノを弾きつつオーケストラを指揮する「プレイ・コンダクター」として、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を見事にまとめ上げた。共演者と指揮者の二役を同時にこなすこの難役は偶然に生まれるものではない。ピアニストとしての到達点と指揮者としての挑戦を並行して積み重ねてきた彼の長年の蓄積があってこその「準備された成功」だ。客席からは代打への落胆ではなく、思いがけない幸運に沸く歓声が上がった。
一般にこうした成功神話は「千載一遇の機会」によって語られる。機会は誰にでも等しく通り過ぎるかもしれないが、その機会をつかんで勝利のホームランに変えられるのは、準備された者だけだ。
代打がベンチで何千回も素振りをして体を温め、無名の演奏者が楽譜が擦り切れるほど練習室の灯をともす理由はただ一つ。いつ来るかわからないその一度の「星の瞬間」に恥じないためだ。
結局のところ、こうした出来事は表面的には偶然に見えるが、深く眺めれば誠実さが生んだ必然に近い。代打が千載一遇の機会を生かして成功神話を紡ぐのを見届けることは、我々の人生にとって大きな祝福だ。
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